2013年1月16日水曜日

林檎の香り

風邪を引いたのか、一歳半の子が熱を出す。小さな子は平熱が高いので発熱すると高熱になる。悪い夢を見たのか、起きると大きな声で泣き、なかなか落ち着くことがない。落ち着かせようと望めば望むほど、意に反して泣声が大きくなる。

そこでまず電解水を与える。好きなものを与えて少し落ち着かせる。抱いて安心させる。部屋を温めておき、湿った服を優しく脱がす。寒がらないように毛布で裸を包む。泣声が大きくならないように耳を澄ませながら。ぬるま湯で固く絞ったタオルで身体を拭う。着替えと身体を拭いた放熱で熱も少しは下がっている。新しい服に着替えさせると気持ちも良いのか笑みもこぼれる。そこで検温して様子を見る。気を付けるのは脱水と熱性痙攣。果物やジュースを与える。子供は高熱があっても遊びたい。少し遊ぶのに付き合うと満足して眠りへ向かう。首に柔らかな布を巻く。眠りに落ちやすいように濡れたタオルを額に乗せてやる。風邪を引いたとき、林檎を摺る。台所の音と微かな香り。幼い頃に熱を出したときのことを覚えている。なによりも冷静に子の側にいる。それらのことに子は安心する。こうして私達は親になっていく。これらは熱を出した幼い僕に祖母がしてくれたこと。熱を出した子の隣で見た今年の初夢は祖母に抱かれる夢だった。